東京・銀座のど真ん中に建つ中央区立泰明小学校

東京・銀座のど真ん中に建つ中央区立泰明小学校(和田利次校長)。「つたの葉」に彩られた校舎と「フランス門」と呼ばれる瀟洒なデザインの通用門でも知られる同小学校では、2013年の夏休みの課題として、「ワタシの一行」感想文に取り組みました。児童の読解力なども考慮して、5年生(60名)、6年生(49名)が参加。児童は、主に「新潮文庫の100冊」から各自の課題図書を選定して、「一行」を選び「コメント」を書きました。小学生には難解な作品を選択した児童もいて“苦戦”の様子が窺えるコメントもありましたが、“小学生で、よくぞこれを選んだ”と言いたくなるような、素晴らしい一行が多数ありました。

※泰明小学校「ワタシの一行ノート」(提出用紙)

6年1組の担任・中山彩美先生は、今回の取組みについて、こう話してくださいました。「児童が書いた『ワタシの一行』とコメントを読んで、まず驚いたのは、どの児童の感想からも本に向き合う姿勢がしっかりと伝わってきたことでした。感想を書かせると、あらすじを書き、大まかな感想でまとめてしまうことも多いのですが、今回は一人一人の思考力の高まりを感じることができました。読書好きの児童でも、どちらかというと“感覚的に”読書を楽しむ児童は少なくありません。その点、『ワタシの一行』では言葉に焦点を当てて読むことで、子どもたちは“なぜ自分の心にその言葉が響いたのか”をじっくり考えることができたようです。考えるためには、言葉をなぞるだけでなく、その言葉の裏にあるメッセージや著者が描いている世界観を読み深めることが必要です。その過程で自分の生活を振り返り、自分が大切にしている価値や自分の目指したい生き方を具体的にイメージできた児童もいました。このように、感覚的に捉えたものを“なぜそう感じたのか”筋道を立てて相手に説明することは、国語の学習にとどまらず、“学び方”を学ぶ上で大切な姿勢だと思います。今回は、それを身につける良い機会になったと感じています」。

さらに中山先生は、感想文だけでなく、教室での国語科の指導に「ワタシの一行」を活用できるのでは、と言います。「物語文を読み取る学習に際しては、一時間ごとに一番心にのこった『ワタシの一行』を選び、学習の積み重ねを児童自身が実感できるような授業を実践してみたいですね。その一行へのこだわりを大切にしながら登場人物に自分の体験や想いを重ねたり、叙述と自分の想いを行き来したりしながら読み深めるための、良い支援になるのではないかと思います。また、一行だけに焦点を当てるのではなく、その前後の流れとのつながりを把握するためにも、『ワタシの一行』は児童にとっていい材料になると感じています」。

和田校長先生からも、こんなメッセージをいただきました。「『ワタシの一行』は、子どもたちと本との出会いが、人生の確かなトピックとなるほどの教育的価値のある取り組みであると考えます。あるいは、人生観をも変えてしまいそうな珠玉の言葉との巡り会いでもあります。本とのお付き合いは一生ものであります。人生を豊かにするエッセンスです。今回の取り組みを通して、読書が、子どもたちが成長してゆく中で、友として、師として、そして、自身の心の鑑として連れ添う相手になってくれたらと願っています」。